こちら側へようこそ

キリンの第2部　The Horizontal Graysの中でも好きな話の一つが、吉村さんの出てくる話。家庭もあり、車に乗ってるおじさんが、バイクの世界に帰ってくる話です。

SCENE.23（キリン8巻）より------

「あのーっ　ちょっと跨がってもいいですか？」
「ダメ」
「えっ？」
「ダメだよ！　どうしてもっていうんなら自分で金だして買いなよ」
「ははっ　ダメですか　うーむ」
「まっ　気ィ悪くすんなよ　バイクってそういうもんだ」
「ははっ」

それは身震いするように突然やってきた
そこには自分の忘れていた領域がある！
少年とバイク――
高貴な存在は自分の目の前で笑いかけた

「おっさん！　本当は飛ぶんだぜコレ・・・・・　知ってんだろ？　知ってんなら帰ってきなよ　こっち側によ」

なにひとつ不満があるわけでもない　だが　今までやってきた自分とはいったいなんなのだろう
走行車線を無理なく流れに乗り　決して追い越し車線に出ることもなかった
ただ　ひたすらクルマの列からはみ出さないように心がける

本当は飛べるんだぜ・・・・・

はにかみながら風が駆け抜け遠ざかる

追いつくはずはないのに　10秒ほどアクセルを踏み込んだ

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